みやぎ震災復興研究センター

10年検証ブレスト(第31回)を開催しました

テーマ:「震災から11年:沿岸地域の復興まちづくりの現状と課題(その3)〜 市街化調整区域内現地再建エリア再生の展望-地区計画の可能性〜」
日時:2022年8月6日(土)10:30〜12:30
開催場所:東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター(オンライン併用)
報告者:遠州尋美会員
補足コメンテータ:庄司あかり会員(仙台市議会議員)

【遠州報告要点】

  • 仙台市東部沿岸域の既存集落のうち,防災集団移転対象地区から外れて現地再建地区となった地区において,居住環境が著しく悪化し,コミュニティの解体・消滅の危機に置かれている。
  • 典型例である井土地区では①世帯数が10分の1に減少して現地再建は進まず,②不在宅地の環境悪化が進行している。
  • 現地再建が進まなかったのは,①甚大な津波被災の恐怖,②仙台市復興プランが集団移転実施を示唆,③公費解体の実施,④集団移転地区を明示した復興計画中間案(最終案で現地再建地区に),⑤「井土地区の移転問題を考える会」との交渉における市の前向き姿勢など移転志向を助長したことが関係した。
  • 不在宅地の環境悪化が進むのは,以下の理由。①市街化調整区域での住宅建築制限,②市街化調整区域でも一時利用なら迷惑施設でも立地可能,③土地の売却困難な中で固定資産税など土地保有による経済負担があるため,土地所有者に迷惑施設排除の義務付け困難
  • 復興計画は現地さ建築の建築を規制しないとしたが,市街化調整区域の制限は緩和せず。そのため,現地再建は進まず,コミュニティの存続維持は困難に。
  • 都市マスタープランでは,現地再建地区は「集落・里山・田園ゾーン」に位置付けているが,現地再建地区の現状は,「集落・里山・田園ゾーン」の目標にそぐわない
  • 井土地区の危機を回避するには,①居住人口の回復と,②迷惑施設立地の抑止が必要。そのためには,市街化調整区域の開発制限を緩和して,住宅建築を可能にすることが不可欠。
  • 庄司あかり会員の市議会での提案
    • 仙台市が定めている市街化調整区域における地区計画運用基準(市街化調整区域内において定める地区計画の区域に関する方針)に,津波被災集落再生型という類型を追加し,被災前の集落地域(地目が宅地である区画が比較的まとまって存在している区域)の宅地に限定して開発制限を緩和し,農家住宅や分家住宅以外の住宅建築を可能とする。
  • 提案により期待される効果
    1. 上記区域内に限って住宅の建築を可能とすれば,コミュニティの維持に必要な居住人口の回復が見込まれる。
    2. 被災前の集落区域の宅地に限定して行う開発制限の緩和は,市街化の拡大につながる恐れはない。被災しなければ,今日に至るも,急激な人口減少は生じなかったと考えられ,開発制限を緩和しても旧来に復するに過ぎない。
    3. 開発制限の緩和によって,効果的な宅地利用の可能性が開かれれば,宅地の売却や迷惑施設以外への賃貸も可能となるから,あえて迷惑施設に賃貸する必要はなくなる。すなわち,集落の居住環境は明らかに改善する。
    4. 井土地区の急激な人口の減少と集落環境の悪化は,当初に示した集団移転地区から現地再建地区に変更し,住宅を解体撤去した宅地の買取を行わず,また,現地再建を効果的に実施する適切な支援を講じなかったことにより,市の不作為の結果を是正する意味でも重要
  • 庄司提案の妥当性
    • 京都市をはじめ,すでに,既存集落改善型で,地区計画を運用している自治体がある。特に,京都市では,「地域コミュニティ維持継承型」という類型の地区計画で,「市街化調整区域に定められる前(昭和46年12月28日)から相当規模の一団の街区が独立した日常生活圏を形成している既存集落」に地域まちづくり構想を定めることにより,「移住・定住の促進」に必要な住宅の建築を可能としている。
  • 今後の展望として,「都市計画提案制度」(2002年導入)の活用を考慮したい。
  • 地区計画の成立には,関係権利者の同意が前提となるから,依然課題は小さくない。何よりも大切なのは,当事者の皆さんの共同の意思である。井土の皆さんの運動の発展に期待したい

【配布資料】

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