みやぎ震災復興研究センター

避難生活で苦しむ被災者を一顧だにしないプランは復興プランに値しない
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遠州尋美

みやぎ震災復興研究センター・事務局長(gmail登録)

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復興の取り組みで最も大切なのは,被災者の本当の姿を把握し認識すること,現に苦しんでいる被災者の生命とくらし,人権を守ることです。私は,それが欠如したプランに,復興プランを名乗る資格はないと考えます。

 発災から3ヶ月を経てなお,苦しい避難生活を続けておられる被災者のみなさまが,一日も早く平穏なくらしを取り戻すことができることを願わざるをえません。

 石川県は,令和6年3月28日に第2回石川県令和6年能登半島地震復旧・復興本部会議を開催し,「創造的復興に向けたプラン」の骨子案を討議しました。同骨子案および議事録を拝見し,驚きを禁じることができませんでした。避難の長期化が避けられないのは確実なのに,骨子案には避難先で苦しむ被災者のくらしを保障する施策が一つもなく,議事録でもその必要を発言した参加者は一人も確認できませんでした。危機管理監は「発災からこれまで人命優先ということで進めてきて、ステージが今、被災者の支援というところに変わってきているかと思いますが、いよいよ復旧・復興ということで、プランづくりが始まったという認識」(議事録6ページ)だと発言しています。

伝え聞く被災地の現状

 石川県のボランティアに対する冷ややかな対応の中,被災地に入って主体的に被災者支援に取り組む経験豊富な支援者から聞こえてくるのは,「自宅におられる在宅避難者の4割は応急危険度判定で『危険』(赤札)と判定された住宅に戻られている」「孤立集落が依然として無くならない」「届いていた支援物資が4月になって届かなくなった」「七尾市に設置した避難所で支援物資を配ると,穴水町や志賀町から取りにくる。ほとんどが在宅の方で,4割はコンビニで惣菜が買えるが残りは食べるものがないと言っている」「自分で民間借家を借りたり,親戚の家に避難しているのか,県自慢のDXで把握していない被災者が大量にいて,見えない被災者の把握が最大の課題」など,県の認識とはかけ離れた状況ばかりです。

 被災者の中には,ご苦労を重ねてくらしやなりわいの再建に踏み出した方もおられ,その方たちをささえることは大切ですが,復興の取り組みで最も大切なのは,被災者の本当の姿を把握し認識すること,現に苦しんでいる被災者の生命とくらし,人権を守ることです。私は,それが欠如したプランに,復興プランを名乗る資格はないと考えます。

 私も呼びかけ人に名をつらね,すでに緊急アピール「被災者主体の復興の道をめざして」を公表し,賛同を募る取り組みを進めているところですが,県の杜撰な復興プラン骨子案を目にし,黙過するわけにはいきません。

 見えない被災者の把握を徹底し,被災者の直面する苦しみから解放することを最優先課題とする復興プランづくりに取り組んで欲しいと切に願います。

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