遅々として進まない能登地震からの復旧・復興
—— 私たちはなにができるか
新医協東北・宮城支部 市民講演会から
発生から半年以上が過ぎても,被災直後と変わらない風景が今なお広がる能登半島地震被災地。復旧・復興に必要なリソース(ヒト,モノ,カネ)が圧倒的に不足する中,能登地震被災者の生活再建と,被災者の主体的意思に基づくコミュニティ主体の復興を支援し励ますために,東日本大震災を経験した私たちは,その経験と教訓を踏まえて一体何ができるのか。2024年7月18日,新医協東北・宮城支部 市民講演会で「自立型コミュニティーづくりで,被災者の自発的意思に寄り添う復興を」と題して講演しました。主催者の新医協がその報告資料の公開に同意くださいましたので,共有させていただきます。
講演テーマ「自立型コミュニティーづくりで,被災者の自発的意思に寄り添う復興を」
【主な内容】
- 広範囲に多様な被害に見舞われた能登半島地震の概要
- 被災者のくらしの実態が見えない——当面する最大の問題
- 圧倒的なリソース不足と深刻な復旧・復興の遅れ
- 能登半島復興にまつわる不吉な影
- 国防一体型復興!?惨事便乗を隠さない県知事の姿勢
- 能登復興における「集約的まちづくり」の必要を説いた財政審分科会
- 建設業の供給力不足のなかで民間投資への圧迫を恐れる財政審分科会の本音
- 緊急アピール「被災者主体の復興の道をめざして」とそのねらい
- 今脅かされている命や人権を守る視点を欠いた石川県創造的復興プラン
- 自立型コミュニティーづくりに背を向けた二拠点居住推進
- 大事なのは関係人口拡大ではなく,最後まで住み続けることができること
- 自立型コミュニティーづくりに向けて
- 今,脅かされている,命,くらし,人権を守る伴走型システムを
- 立場の違いを超え,全ての人の内なる声に耳を傾けて,「参加」を築く
- 今伝えたい大震災復興での取り組み事例
- 住民意向に立脚した集団移転——気仙沼市唐桑町只越地区の経験
- 住民主体の移転元地活用事業——「雄勝花物語」による人間復興
講演資料
能登半島地震の被災者数は日本の災害史上最大級
国が最後の一人まで支援し続ける,その決意を明確な形で示すことを求めたい
特に大きな被害は奥能登の6市町に集中したので,狭い地域に極限されたローカルな災害であったかのように誤解されています。しかし,災害救助法が適用された市町村に住む人々の人口,すなわち被災地人口ということで見ると,東日本大震災,阪神・淡路大震災,熊本地震をも上回る,戦後最大の災害です。
阪神・淡路大震災時,兵庫県内の被災市町人口は358万9千人。東日本大震災被災3県の特定区域市町村人口は,257万7千人。熊本地震は県内全45市町村に災害救助法が適用されて178万人。それに対して能登半島地震は石川,新潟,富山,福井の4県47市町村で,411万8千人でした。揺れによる建物倒壊,火災,津波,液状化,崖崩れなどの土砂災害,さらには,一部では地盤の隆起。多種多様な被害が,極めて広範囲に生じたのです。
それなのに,復興基本法もなく,復興財源確保法も,大震災財特法もなく,そして復興財源フレームもありません。補正予算を組むでもなく,場合たり的に予備費対応しているだけです。国の構えがあまりにも違いすぎると思います。東日本大震災の時のようなショック・ドクトクリンは決して肯定しないものの,国が最後の一人まで支援し続ける,その決意を明確な形で示すことが必要です。