住宅復興の教訓
東日本大震災の復興検証
論点1:住まいの復興が蔑ろにされる根本原因
——「居住確保支援」の罠
日本政府は,「住宅再建支援」とは決して言わず,意図的に「居住確保支援」と言う。罹災判定で,全壊,大規模半壊,半壊解体(半壊だが,敷地被害などやむをえない事情で解体した場合)は,応急仮設住宅の給与,生活再建支援金の受給,災害公営住宅への入居資格を得ることができるが,半壊,一部半壊は支援の対象から外れてしまう。半壊(解体した場合を除く)や一部損壊は,補修可能で「居住が確保されている」とみなすのである。
それは,被災からの回復といえども「保険、共済等の『自助、共助』が基本であり、『公助』でそれを側面的に支援する」(2004年4月1日内閣府政策統括官(防災担当)通知)という立場に固執し,個人資産形成に国費は投じない建前に頑なに拘泥していることが,元凶だと言える。
側面支援という公序の中身はどういうものだったのか。災害救助法に基づく応急修理は必要最小限の部位に,また応急仮設住宅も「雨露を凌ぐ」程度の質に制限し,災害公営住宅も,「終の住処」を保証するものではなく,低所得者を対象とする公営住宅の枠組みの中に押し込めてきた。
論点2:大震災時の単線型居住確保支援スキーム
東日本大震災時の居住確保支援スキームを下図に示した。① 住宅が滅失した被災者に対しては,応急仮設住宅を経て被災者再建支援金を支給し,持家取得,民間賃貸住宅への入居,あるいは災害公営住宅への入居をゴールとし,また,② 住宅の滅失を免れた場合には,住宅の応急修理と自力補修により従前住宅で居住を維持すること,それを想定した居住確保支援スキームだった。
東日本大震災時における居住確保支援スキーム
(出所)「被災者の住まいの確保に関する委員の意見整理・参考資料」(中央防災会議「被災者に対する国の支援の在り方に関する検討会」における「被災者の住まいの確保策検討ワーキンググループ」2014年7月30日)掲載の図他を元に,筆者作成
日本住宅会議サマーセミナー2024