みやぎ震災復興研究センター

10年検証ブレスト(第30回)を開催しました

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仙台市東部の井土地区や三本塚地区は,津波で浸水したにもかかわらず防災集団移転の対象外となりました。市街化調整区域で宅地利用や売却が制限され,困難な中でコミュニティの維持・再生に向けた地道な取り組みが続いています。現地の取り組みを支援してきた田澤会員の報告をもとに,ディスカッションしました。

震災復興10年検証枠組み検討ブレスト(第30回)
テーマ:「震災から11年:沿岸地域の復興まちづくりの現状と課題(その2)〜〜 現地再建エリアの現状と課題—若林区井土地区での取り組みをとおして〜」
日時:2022年6月19日(土)10:30〜12:30
開催方法:オンライン
報告者:田澤紘子会員

仙台市東部の井土地区や三本塚地区は,津波で浸水したにもかかわらず防災集団移転の対象外となりました。市街化調整区域で宅地利用や売却が制限され,困難な中でコミュニティの維持・再生に向けた地道な取り組みが続いています。現地の取り組みを支援してきた田澤会員の報告をもとに,ディスカッションしました。

【田澤報告の要点】

  • 田澤会員は,仙台市市民文化事業団の一員として,井土地区をはじめとして現地再建地区となった仙台市東部の津波被災集落の被災住民を励ましコミュニティ建設を支援する活動に取り組んできた。とりわけ,そこに暮らしてきた住民たちの「語り」をもとに地域の記憶・生活文化をつなぐ「RE:プロジェクト」は,地域の伝統的営みを浮き彫りにし,多くの気づきをもたらした。
  • その活動の舞台となった井土地区は,被災前には100戸を超える比較的大規模な伝統的農村集落だったが,大震災の津波により全戸が全壊し,36名の方が犠牲となるなど大きな被害を受けた。仙台市が示した復興ビジョンでは,当初は集団移転の対象地区として災害危険区域に指定する見通しとなっていたが,その後,移転対象区域から外れ,現地再建地区に変更された。
  • しかし,当初の見通しと公費解体期限により,計画変更時大半の住宅は解体済みであり,多くの世帯は個別に,また,18世帯は集団で自主移転(生活インフラ敷設は市が支援)するなどして,現地再建戸数は11世帯(住民票のある世帯)とほぼ10分の1に減少した。
  • 井土地区住民は,震災直後に「井土地区の移転問題を考える会」を結成して,内陸への移転と集落宅地の活用を求めて仙台市と協議を重ねてきたが,当初の期待に反して有効な解決に至ることなく2012年9月に「考える会」は解散し,コミュニティ活動の維持も困難な状況が生じていた。不在化した宅地の一部は事業者に借地されているが,開発制限により資材置き場等の利用に限定され,集落景観と今日住環境悪化の一因となっている。
  • 集落の生業であった農業生産は,2013年に設立された「農事組合法人井土生産組合」が農地を借上げ一手に担っているが,他方,同法人に委託する個別農家の農業への関心や集落環境維持への意識も希薄化するなど課題も多い。
  • そうした中で2016年1月に地下鉄荒井駅に併設された「せんだい3.11メモリアル交流館」を拠点に,「RE:プロジェクト」を踏まえた新たな交流プロジェクトが展開され,現地再建世帯と移転世帯との交流を再組織し活性化する兆しも生まれている。とりわけ,その活動を基礎に「令和3年戸仙台地域づくりパートナープロジェクト」に採択されて取り組んだアンケートや課題整理を通じて「井戸まちづくり推進協議会」が結成され新たな地域再建の核ができた。
  • 「井戸まちづくり推進協議会」や三本塚町内会などの取り組みにより,仙台市もより柔軟に地域と向き合う姿勢が見え始めた。課題は多く,壁も高いが,震災前に培っていた「地域力」の再構築と発揮に期待し,寄り添っていきたい。

【配布資料】

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