震災復興10年検証枠組み検討ブレスト(第28回)
オンライン座談会「岩手県の大震災をどのように評価するのか」
日時:2022年2月27日(日)10:30〜12:40
開催方法:オンライン
鼎談者:
- 井上博夫会員(岩手大学名誉教授・岩手地域総合研究所理事長)
- 桒田但馬会員(岩手県立大学総合政策学部教授)
- 杭田俊之さん(岩手大学人文社会科学部教授)
- 広田純一さん(岩手大学名誉教授・いわて地域づくり支援センター代表理事)
司 会:遠州尋美(みやぎ震災復興研究センター事務局長)
今回のブレストは,みやぎ震災復興研究センターと岩手地域総合研究所の合同企画として実施しました。
宮城の人たちから評価の高い岩手の復興の内実について,学識経験者として,また,実際に復興の現場に立ち会った経験を踏まえて忌憚のない意見交換を行なっていただきました。司会者の印象としては,以下の諸点が,鼎談者に共通の認識であったように思います。
- 国の制度設計に基づく復興枠組みのもとで進めざるを得ない以上,岩手であっても制約は免れず,復興の現場にあってはそう大きな違いはなかったのではないか
- ただし,被災者支援(医療支援,住まい再建支援など)では宮城と比較して岩手の方が手厚かったといえるが,それは,使徒に制約のない取崩型復興基金の使途に際立って現れた
- 県による各自治体の支援が十分だったのかといえば,不満を感じていた自治体は多い。むしろ,県が余計なことをしなかったことが,地域の主体的取り組みを引き出したといえるのかもしれない(ある意味皮肉を込めて)
- マンパワーに乏しい被災自治体にとって,ありがたかったのは,自治体間協力で派遣されてきた職員たちの奮闘だった
- 復興計画作りも,交付金事業の実施も主体は被災自治体だったのだから,その内容や住民合意のあり方など,県よりも自治体の姿勢が問われるべきではなかったか
上記の諸点のうち,宮城の人たちが宮城県の復興について認識している点と異なるのは,最後の点と思われます。制度の字面では,自治体に決定や実施の決定権があるので,県が介入できる余地はありません。しかし,残念ながら,宮城県の場合に県の意向に反すれば先に進まないということが事実としてありました。また,「水産業復興特区」の導入のように,地元や事業者(漁民)の意思に反して,県知事が強硬に主張して国の制度を変えてしまうこともありました。宮城県と岩手県の大きな違いがここにあったように思います。
【配布資料】