みやぎ震災復興研究センター

震災10年検証枠組み検証ブレスト(第10回)を開催しました

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阿部会員が「山元町の復興まちづくりの問題点」,事務局・遠州が「被災3県の住まいの復興に見る特徴と違い」及び「仙台市の収入超過者の特徴」について報告しました。

  • 阿部報告
    • 山元町は町域の37%が浸水し,浸水域には人口の過半が居住していた。農業被害も甚大で,特産品のイチゴ農家の大半が被災した。
    • 深水域の大半を災害危険区域に指定し,JRを内陸側に移設して,新山下駅,宮城病院,新坂元駅の周辺に津波復興拠点整備事業によって新市街地を築き浸水域居住者の集団移転を目指した。
    • そのさい災害危険区域を第1種から第3種までに区分し,第1種は住宅新築を禁止,第2種,第3種は嵩上げにより再建可能としたが,第3種については移転しても宅地の買取は行わず,移転・再建支援に格差を設けた。
    • 農業は,大規模圃場整備と集団化・法人化が進められ,イチゴ農家も4箇所に集約化・企業化が実施された。
    • 震災後人口減少が続き,人口はピーク時の3分の2に減少している。
    • 復興まちづくりの失敗により,以下の問題が発生
      • 新市街地と移転元地の激しい格差。特に移転元地の荒廃
      • 原因は,災害危険区域の区分と住宅再建支援の格差。公費解体を急かせ,町の意向に沿わない地元意向を無視。議会で請願が採択された行政区内での集団移転要望を黙殺。町外移転を加速。
      • 保育園など公共施設を住民の反対を無視して強行。公共サービス格差も進展。
    • 農業復興にも問題
      • 大規模圃場整備・集約化・法人化を進めるも,農地面積が目標を下回り,宅地の農地編入。しかし瓦礫混入などに耕作が進まず,経営の足かせが拡大。
      • イチゴ農家の集約化に関しては,売上が回復したが,水耕栽培・機械化により味の特徴が失われ,また,施設・設備の更新期に対応できるか不安が残っている。
  • 遠州報告
    • 被災者生活再建支援金の支給状況,災害公営住宅・住宅等用地の供給実績により,住宅再建の状況を分析すると,被災三県に特徴的違い
      • 岩手県:持家再建では修復よりも建設・取得と復興まちづくり依存,借家では災害公営住宅優位。リアス式海岸の制約のため。
      • 宮城県:持家再建では修復と建設・取得が拮抗でやや修復優位。復興まちづくり依存は小さい。借家も民間借家と災害公営が拮抗。平野部の津波被災と大都市=民間賃貸ストックの豊富さを反映。
      • 福島県:持家再建では,建設・取得が優位だが復興まちづくり依存は小さい。借家では災害公営が優位。原発長期避難の特徴。災害公営も原発避難者向け県営住宅の大量供給。
      • みなし仮設で民賃居住の経験が大きい中で,災害公営の重みは特筆できる。
    • 宮城県の収入超過者176世帯の特徴
      • 高家賃:最高159,900円,10万円以上が32世帯。
      • 急激な家賃上昇:対前年比最高7.67倍,2倍以上21世帯。
      • 本来階層から収入超過になったのは57世帯。第一階層から収入超過も23世帯。5万重以上の家賃上昇9世帯。9割が2倍以上。

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