みやぎ震災復興研究センター

震災復興10年検証枠組み検討ブレスト(第21回)を開催しました。

Date

震災復興10年検証枠組み検討ブレスト(第21回)
日時:3月24日(水)13:30〜15:30
場所:みやぎ県民センター(オンライン併用)
報告:遠州尋美会員ほか
テーマ:「大船渡差し込み式防集事業とその教訓」

 大船渡市では,大規模な造成によらず,既存集落の空き地等にわずかな戸数の被災者の移転先住宅をはめ込む形で防災集団移転促進事業を行いました。事業の費用と工期の大幅な短縮を実現しました。2020年12月12日,13日に実施した大船渡し札調査を踏まえて,その意義と教訓を議論しました。

 地形の制約で,大規模な住宅団地を造成して高台移転を行うことが困難だったことから,その制約を逆手に取って,浸水を免れた斜面地の集落の空き地を移転先として,2戸,3戸と移転住宅宅地を供給する差し込み式防災集団移転事業(防集事業)を実施しました。大規模な造成を必要としないことから,工期の大幅短縮,工事費の大幅な圧縮に成功しました。既存集落の生活インフラを利用できることも,ライフライン整備費の削減や,生活利便性の確保に貢献しました。

梅神防集地区(大船渡市提供鳥瞰写真と遠州撮影の写真とを合成)

 ただし,防集事業は,本来,移転元集落のコミュニティ維持を主眼とする事業のため,移転先団地は10戸以上という規模要件があり,杓子定規に解釈すれば事業実施は不可能でした。しかし,復興特区法による大震災特例が功を奏してその制限が緩和され,実現が可能となりました。

 残された問題は,移転者と既存コミュニティの融合を適切に図ることです。そこで力を発揮したのが,公民館活動を基礎とする住民自治の伝統でした。移転先となる空き地の選定,地主との交渉,移転者同士のマッチングまで,公民館長ら,地元住民の自主的取り組みが力となりました。市も,地元住民と被災者の主体的取り組みを事業推進の柱に位置づけ,積極的に後押ししました。それが成功の原動力となったのです。

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