6月30日夜半,久方ぶりで藤永延代さんと電話で話した。私が大経大に勤務していた頃,大阪自治体問題研究所の理事として,地球温暖化問題やコミュニティ主導で再生可能エネルギーの普及活動に共に取り組んだ頼りになる”姉様”だ。その人脈の広さ,決して物おじしない活動力と包容力は比類なく,会えば必ず元気をもらえる最も信頼できる友人である。彼女の当面のターゲットは,大阪の生ゴミ最終処分場として埋め立てられた夢洲で開催される大阪万博と,引き続く統合リゾート(IR)という名のカジノ建設を阻止する運動。当然,万博,IRの話に及び,6月29日放送のTBS報道特集がなかなか良かったと教えていただいた。
私は,最近ではほとんどテレビを見ないので,見逃してしまっていたのだが,ネット検索でYouTubeに上がっていることを知った。早速視聴すると,藤永さんが堂々の主役。彼女が番組づくり協力したのだから,重要ポイントがきっちり抑えられた,良い報道番組に仕上がっていた。
大阪万博の会場で“メタンガス爆発” 会場の安全性は?万博協会は「信じて来て、楽しんで」【報道特集】| TBS NEWS DIG
スケジュール通りの開催を脅かす建設工事の遅れ
番組は,まず,度重なる事業費の増額を導入にして,今回の目玉,木造大屋根リングに。リング最上部から会場内を捉えて,パビリオン建設の遅れへと切り込む。
独自のパビリオンを予定する51カ国のうちおよそ10カ国でまだ建設業者が決まらず,業者が見つかった8カ国も未だ着できていない。
パビリオンの設備工事を担う作業員は,
図面がないとか,建物の中の内装屋さん決まってないとか,何社かもう遅れますっていうところもね出てきたりしてるんで……。だから万博開催されてもね,もしかしたらちょっと工事してるとこが出てくるんじゃないか,ぐらいまで今なってますね。
メタンガス爆発事故
そして,最も重大な問題,メタンガスの爆発事故の真相へ。
事故が起きたのは,受付ゲートが置かれる1区トイレ予定地。入場者がまず最初に訪れる場所だ。
事故について万博協会整備局長は,
正直言いまして,まこれぐらいで済んでよかったなっていうのが本音です。ま,いわゆる人的被害もなかったし,第三者被害もなかったし,ま,破損っていうのもかなり小規模で済んだので,事故にならなかってていう意味で言うと,ま,ほっとしてるというか,あのま運が良かったって言い方をするのがいいのか分かりませんけど。
夢洲は,ゴミの最終処分場だから,メタンガスの大量発生は周知のこと。番組入手の資料によれば,爆発事故の起きた1区のメタンガス発生量は1日1.9トンにも及ぶ。一方,メイン会場となる2区,3区ではどうなのか。協会の説明は,「他のエリアでは,可燃性ガスの発生はありません」。
2区でも発生が確認されていたメタンガス
しかし,藤永さんはその嘘を指摘する。
2区のねメインのところは,あのメタンなんかそんな心配ありませんっていう言い方も,それが嘘やと思ってるんですね。ないわけないと。
間違いなく地下鉄工事をしてるところの下を,もう分かってたから,港湾局は調べてるんですよ。そしたら,メタンちゃんと検出されてるんです。
大阪港湾局が行った地下鉄工事の事前調査で2年前からすでにメタンガスの発生は確認されていた。そして大阪府議会での質問に松井知事はその事実を認めていた。
花岡議員から,万博会場にアクセスする鉄道事業費の増加を質問された松井知事は,
新たに判明したメタンガスによるトンネル校内での事故防止のための事業費が増加することとなりました。万博開幕までの,え,開業に向けてコスト及びスケジュールの管理を徹底して取り組んでまいります。
万博協会が2区でのメタンガスの発生を認めたのは今年5月。さらに海外の参加国に正式に説明したのは6月後半の国際会議の場だった。
不安が募る教育現場
万博会場での爆発事故に最も危機感を募らせているのは,「無料招待」だとして,府から児童・生徒の引率を矯正されいる教員たち。
私たち引率する側から言うと,無事に行って,帰ってこれるかどうかっていう,これがもう最大の,なんというか,課題というか,だから安全面でも本当に行けるのかっていうか………
息子さんが,YouTubeなんかで自分で調べて,「いやこんなとこは行きたくない」と,「行けへんで」という風に言われたと。爆発あったけれども安全なんですかて保護者に聞かれたら,答えれないんですよね。私たちは。
交野市山本市長の怒り
特に,交野市山本市長が怒りを隠さないのが,大阪府教育庁が行った踏み絵まがいの意向調査。学校単位の参加希望を問う質問の選択肢は,「希望する」「未定・検討中」の2つで,「希望しない」はなかったのだ。
山本市長は言う。
いや学校現場としては「できたら行きたくはない」と。うん。なぜなら中身も分からない,安全かどうかも分からない。でも「来い」と言われてると。でも「本心は行きたくない」と。でも「言えない」と。でも「回答はしないといけない」と。
無料招待というと,あくまでそれは入証券の話であって,例えば入場券で言いますと,ま,中学生であればおよそ3000円,小学生1200円ですけども,仮にバスをチャーターして,交野市から現地に行くと,1人で5000円かかりますので,バスの方が高いんですけども,それでも無料状態と言ってるのが実態です。
協会は,もう「ここでやれ」って言われて(協会整備局長)
不安や課題の克服のために万博協会はどう対策していくのか。記者の質問に答える万博協会整備局長の率直さ………
「メタン・イコール・危険」っていう,ま,そこのちょっとイメージの払拭含めて,我々の対策で大丈夫だよっていうメッセージは,まちょっと丁寧にいん場面で伝えていくしかないかなという風に思います。
記者があきれて突っ込む。
爆発事故が起きている事例も過去にもあるわけですね。そうした中でも今回爆発事故が防げなかった。メタンの発生状況について予測することはかなり難しいっていうことも事実じゃないかと思うんですけど。
対する整備局長の答えは,
まコントロールはできるぐらいのレベルなんだろうなっていうのが率直な感覚です。ま,ただ今回ちょっと事故を起こしたので,あんまりこう信用されなていうか,あの起こしといて何言うてんのっていうとこも正直あるんですけど。
記者が,危険や問題の多い夢洲で開催することの妥当性を改めて問うと
協会は,もう「ここでやれ」って言われて,「対策やって仕事しろ」って,「開会しろ」って言われてるので,そこにちょっとお答えは,はい私らに見解はないです。来場者の安全を守るっていうのは主催者,我々の当然の義務っていうか,開催の前提になりますので,そこは信じて来ていただいて楽しんでくださいと。
自公政権や維新府政ときっぱり縁を切らねば
この最後のくだりは強烈だ。「なぜ,こんな場所でするのか? 国際社会にどう説明するのか?」「私たちは,ここでやれと言われているからやっているので,‥‥‥私たちにそれを言う権限はない」。こんな杜撰な事業に,国民と大阪府民の税金が費やされる。来場者が目標が達成できなければ,さらに府民の負担が拡大する。自公政権と維新府政ときっぱり縁を切らなければ,そのつけは孫子の代まで及んでしまう。
報道特集YouTubeサイト
報道特集はYouTube版は,以下のリンクで(いつまでアップされているかは不明です)。
大阪万博の会場で“メタンガス爆発” 会場の安全性は?万博協会は「信じて来て、楽しんで」【報道特集】| TBS NEWS DIG